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黄金律に基づいてデザインされた薄型時計 パルミジャーニ

近年、超複雑時計のジャンルの中で、その数を増やしつつある〝薄型トゥールビヨン〟。しかしそれは、まだまだ手巻きに限った話である。一方、圧倒的に数が少ない〝薄型自動巻きトゥールビヨン〟の中で、史上最も薄く、かつ軽量のキャリッジを搭載すると謳うモデルが、パルミジャーニ・フルリエの「トンダ 1950 トゥールビヨン」だ。ケース厚は8・65㎜、ムーブメント単体では厚さ3・4㎜、キャリッジの重量はわずか0・255gに過ぎない。しかし、こうしたスペック以上に重要な点は、この複雑系ムーブメントを、シンプリシティの極みである「トンダ 1950」のデザインバランスの中に、美しく溶け込ませたという成果のほうであろう。

 デルタハンドを備えた端正なスタイリングに、ティアドロップ状のプロファイルを持ったロングホーンを配し、凛とした雰囲気を漂わせる「トンダ 1950」。シンプルにして芳醇な色香を放つこの希有なるスタイリングが、緻密なバランス調整の上に成り立っていることは今さら言を俟たない。ここに複雑系のムーブメントを載せるという試みは、それだけで非常に高度なバランスゲームに挑むことになるのだ。

 トンダ 1950 トゥールビヨンが搭載するキャリバーPF517は、その基本設計をトンダ 1950用のマイクロローター式自動巻き、キャリバーPF701に拠っている。系列企業のひとつであるエボーシュメーカー、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエのムーブメント開発部長、浜口尚大氏によれば、中間車をキャリッジの前側に配して、主ゼンマイをやや強くした以外は、基本的な輪列設計はPF701と同一だ。キャリッジを追加したことで、ムーブメント径で2㎜、ムーブメント厚で0・8㎜増しているが、これでもギリギリのシェイプアップだろう。PF701では元来、ダイアル側から見た7時位置に調速脱進機を配していたため、PF517のキャリッジ配置もごく自然に思えるが、これには少し裏話がある。このモデルではセコンドサークルのゼロ位置をやや回転させ、外観上「7時8分」(創業者のミシェル・パルミジャーニ氏が生まれた時刻)を正位置に設定しているため、キャリッジ配置も〝7時ぴったり〟である必要があったという。「ぴったりでなければもう少しムーブメント径を小さくできたはず」とは浜口氏の言である。

 チタン素材を採用して、重量0・255gを実現したキャリッジは、ダイアル側にブリッジを持たないフライングトゥールビヨンの形態をとる。キャリッジの回転軸となり、かつ自立させるための土台となる部分にボールベアリングを用いるのはもはや定石だが、PF517ではMPS(スイスのボールベアリングメーカー)製のセラミックボールベアリングを採用するだけでなく、ベアリングのケース自体を歯車状に成形し、ガンギ車を介してキャリッジを回転させるための固定4番車を兼ねている。ベアリングと固定4番車を別体とした場合に比べて、約25〜30%の薄型化を成し遂げている。ただし約3年の開発期間のうち、このベアリングの共同開発だけで12〜16カ月を要したという。浜口氏は、セラミックス製の一体パーツを使うメリットとして、キャリッジの軸をオイルレスにできること、キャリッジと固定4番車の中心出しが完璧であること、水平姿勢と垂直姿勢でキャリッジの摩擦係数が同等となることなどを挙げている。



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